サルコペニアをご存じですか?
この記事では、筋肉量が減ることで運動機能が下がってしまうサルコペニアについて解説します。
サルコペニアは、身体にある筋肉の量が減ることで、運動機能に支障をきたす状態のことをいいます。
サルコペニアになると、日常生活を送るうえで大きなリスクとなるほか、肝臓に悪影響を与えることがわかっています。
サルコペニアは、さまざまな原因で発症します。
病気や栄養障害、加齢などが主なものです。
病気や栄養障害によるサルコペニアは「二次性サルコペニア」、加齢によるものは「一次性サルコペニア」に分類されます。
サルコペニアの症状は、筋肉量のほか、筋力、身体機能の低下なので、病院ではこれらをテストすることで診断します。
筋肉量を量る場合は、BIA法と呼ばれる微弱電流を使用する検査や、放射線を使用して行うDEXA法、CT、MRIなどにより行います。
歩行速度により診断する方法もあります。
これは、約1m/秒のスピードで歩けるかどうかを測る診断方法です。
握力測定により診断する方法もあります。
サルコペニアの診断基準は、男性の場合で26~30kg未満、女性の場合は18~20kg未満です。
サルコペニアは、肝疾患と深いかかわりがあると考えられています。
健康な状態だと、食事により得たエネルギーは肝臓に蓄えられますが、肝臓の働きが弱まると、このキャパシティが少なくなってしまいます。
そのため、これを補おうとして筋肉からBCAAと呼ばれるタンパク質を取り入れます。
また、肝臓の働きが弱まると、有害物質を処理する能力も弱まるためにBCAAを取り入れようとします。
BCAAが過剰に使われると、筋肉を作れなくなってしまうため、どうしても筋肉量が落ちてしまいます。これが肝疾患がサルコペニアの発症につながるメカニズムです。
サルコペニアになると、BCAAが過剰に使われてしまいます。
この物質は自然に生成されることがないので、食事から摂取しなければなりません。
BCAAを構成しているのは、ロイシンやバリン、イソロイシンといったものです。
とりわけロイシンには、タンパク質を生成し、筋肉量を増やす働きがあるとされています。
そのため、サルコペニアの予防には、食事がとても大切です。
食事でBCAAを取り入れることと同時に、生活習慣の改善も必要です。
お酒の量を減らすことはサルコペニアの予防につながります。
肝臓がアルコールを分解していることはご存じだと思います。
肝臓が分解した物質もまた、強い毒性があるのですが、これらの処理を担っているのもまた肝臓です。
つまり、お酒を飲むことは、肝臓の負担を増やすことなのです。禁酒や節酒により、肝臓の負担を減らすことは、そのままサルコペニアの予防につながります。
サルコペニアの予防には、食事とともに運動もとても重要です。
これまで、特に肝臓に疾患を持つ患者さんは安静にすることが常識でした。
ただ、このような療法では筋力の低下や、ほかの疾病につながるリスクが大きいことが近年わかってきています。
そのため、最近は患者さんに合わせる形で運動療法が取り入れられています。
無理のない範囲で行うストレッチ、筋トレ、手すりなどを使うバランストレーニング、強度を維持しながら行う持久力トレーニングなどを行うことが多いようです。
サルコペニアは、「指輪っかテスト」という方法でセルフチェックすることが可能です。
ふくらはぎのもっとも太い部分に、両手の人差し指と親指で作った「輪っか」を合わせてみてください。
この状態で、輪っかの中に隙間ができる場合は、サルコペニアの可能性があります。
この指輪っかは、ふくらはぎの太さと比例する傾向があるので、かんたんにサルコペニアかどうかをセルフチェックできるというわけです。
隙間ができる方は、すでにサルコペニアになっている可能性があります。
また、2年以内に発症する可能性が高いという研究結果もあります。
そのほかにもサルコペニアをセルフチェックする方法はあります。
「5回立ち座りテスト」は、ひじ掛けのないイスに座り、両腕を胸の前でクロスさせた状態で立ったり座ったりを5回繰り返すテストです。
5回繰り返すのに10秒以上要した場合は、筋肉量の減少により機能が低下している可能性があります。
「開眼片脚立位」は、滑るおそれのない床に立ち、両手を腰に当て、片方の足を5cmほど上げ、この状態をキープできる時間を計測します。
右・左、片方ずつ試してみて、どちらか一方でも立位をキープできる時間が8秒に満たない場合は、サルコペニアの可能性が高いと考えられます。
全身の筋肉量が減ってしまうサルコペニアは、何よりも予防が重要です。
食事や飲酒などの生活習慣を見直し、定期的に運動することでサルコペニアを予防しましょう。
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